老犬さくらの独り言その2
「妻の無償の愛」から引き続いた第4弾である。
隣のおばさんにお世話になっているのは相変わらずだが、吾輩は少し甘えが目立ち始めたようだ。鳴くとおばさんが駆けつけてくれるので、うんちやおしっこをしたいときにも鳴くようになった。困ったもので、催してくるのが深夜の1時から2時ごろと明け方の4時から5時ごろなのだ。さすがにこの時間になると、吾輩の飼い主は当然のこととして、おばさんも中々来てくれない。1度隣のおじさんが来てくれた(何をしているのか知らないがおじさんは宵っ張りだ)が、おばさんのようにはいかない。誰も来てくれないと分かっていながら、1時間ほど疲れるまで鳴き続ける。当然、おもらしである。
このようなことが4、5日続くものだから隣のおじさんが怒っているようだ。
「これだけ他人が、さくらの会でコミュニティができるまで頑張っているのに、ここの飼い主はどうなっているのか。留守なら分かるが、深夜に飼い犬が鳴いているのに゛知らん顔”とは何たることだ。それでいて、感謝の言葉の一言でもあれば、まだ許せるがそれもない。これは一種の消極的な虐待ではないか」と。
吾輩としては、おじさんの気持ちも分かるがどうしようもないことで、せめてただ日々、「感謝の気持ち」を忘れないことにしている。おじさん、ごめん。
1つ、明るいニュースがあった。
ある日、吾輩のいる駐車場に、髪を青く染めた若者が入ってきて、吾輩の口に水を含ませてくれた。当然、吾輩にとっては見知らぬ人である。そこへ隣のおばさんが飛んできて、その若者に話しかけているのが聞こえた。
それによるとその若者は、友達が毎日、この前を通って自分の犬を散歩させているときに、吾輩を観ていてその状況を若者に話したらしい。それで様子を見に来たそうで、吾輩が余りにも苦しそうだったので、無断で入って水を含ませていた、ということだ。
さらに話が弾み、何とこの若者は、吾輩のような老犬を引き取って、せめて犬生(人生?)の最後は安らかに過ごさせてあげたい、という活動をしているそうだ。
そんな人が、しかもこれほど若い人が、まだこの日本に居たなんて驚きだ。吾輩は、この話を聞きながら涙が止まらなかった。日本も捨てたものではない、と人間ではないがそう思った。
その若者は、吾輩を引き取れないかとおばさんに相談したみたいだが、おばさんも答えようもなく、「飼い主には一応耳にいれておきます」と答えていたが、果たしてどうなるか!
吾輩の正直な気持ちを言おう。
どんな飼い主であれ、吾輩はここに居たい。なぜなら、ここの飼い主も昔は可愛がってくれたこともあるし、なによりも今は、隣のおばさんをはじめ「さくらの会」のメンバーが、次々と心配げに訪れてくれるからだ。
こんな「幸せ者」は居ないと思う。隣のおばさんと「さくらの会」のメンバーの方々とは離れたくない。今後、甘えは少々控えるからここに居させてください。お願いします。
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