妻の無償の愛!
向かいの家の老犬から感謝状が以下のように届いた。
「吾輩は老犬である。名は「さくら」という。
年齢は自らも覚えていないが、15,6歳には十分達していよう。なぜなら、身体は痩せさらばえて肋骨が浮いている。足腰も衰え、しっかりと立つことも苦労する。特に後ろ足にその衰えが目立ち、とても突っ張ることができない。
問題なのは、重い鎖に足を引っかけたり、その鎖が首に巻き付くことだ。そうすると身体的に衰えた吾輩は、自らの力でその鎖を外すことが出来なくて、ただ、鳴き叫ぶしかないのである。
ところが吾輩の飼い主は留守が多い。60歳くらいの「おばさん」が1人住まいと思いきや、車が2台止まって、息子らしい者が泊まる。またある時は、自転車が2台止まっていて、娘らしい者が幼児を連れて出入りしている。月命日らしい日にはお坊さんがお経を挙げに来ているので、どうやら旦那さんは居ないようだ。
そのおばさんは、土曜、日曜、祝日にかかわらず家に居ないときが圧倒的に多い。何か自営で商売をしているのかもしれない。そのせいで、夜の10時すぎになると家は真っ暗になっている。早い就寝なのだろう。
吾輩が鳴いていると、前の公園で遊んでいる母子たち、あるいは子供たちが「何事か」とガレージの柵に駆け寄ってくる。ところが、何もできないのでただ騒ぐだけである。
そこで「救世主」が現れる。
そう、それは、向かいの家のおばさん(我が愚妻)だ。
もともと動物好きのようで、吾輩が鳴き叫んでいると、庭花の手入れ中でも、飛んで駆け付けてくれる。これは昼間だけではなくて、夜になって飼い主が寝入ったときも駆け付けてくれたことが数度あった。
何よりうれしいのは、門扉を開けて駆け付けるなり、吾輩を抱きしめてくれて「どうしたの?どこか痛いの?」と声をかけ、重い鎖に巻き付かれた肢を解放してくれたり、首に巻き付いた鎖を外してくれるのである。そして落ち着いたら、「可愛い!可愛い!」と何回も声をかけ、頭をなでてくれるのである。
ある時はガレージに散らばった「うんち」を片付けてくれたり、毎日、犬小屋の敷物を新しく選択したものに変えてくれる。
吾輩は、「感謝!感謝!」
ところが老犬の悲しさ。吾輩の喜びを、尻尾を振って表現することができないのだ。おばさんには悪いと思いながら、身体を摺り寄せて、その感謝の意を表現するしか術はないのである。
残り少ない犬生。おばさんに会えたことが一番の幸せと思いつつ、今後、どれだけ迷惑をかけるかもしれません。何卒、よろしくお願いします。
お世話をかけてる老犬「さくら」より」
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コメント
自らの努力が報われるかどうか関係なく、愛を注げる人間は、立派としか言いようがない。
ひょっとしたら、今の日本人が忘れしまったものかもしれない。
投稿: ちゃちゃ | 2021年5月11日 (火) 20時20分