妻の無償の愛第2弾
吾輩は老犬である。名はさくらという。
またの登場となる。
相変わらず隣のおばさんにはお世話になっている。申し訳ない思い出一杯である。
そうは思いつつ、吾輩はつい甘えてしまう。
おしっこをして下のマットが濡れると、「マットを変えてくれるよう」にと吠えてしまう。うんちをすると「すぐ片付けてくれるよう」に吠える。特にうんちの場合、老犬ゆえに中々力が入らなくていつも苦労するが、隣のおばさんが来てくれる時は、抱き着いて「辛い」という思いで泣き出してしまう。そうするとおばさんは「大丈夫よ。頑張りなさい」と声をかけてくれ、お腹をさすってくれる。それが心地よいので、うんちをしないで吠え続ける。おばさんは困った顔をしながらもさすり続けてくれている。
吾輩の唯一の家族である。
ある時、隣のおばさんのすごいところを観た。
吾輩を抱きしめているときに、近所で大きな瓶の割れる音が聞こえた。何事かとおばさんは飛び出したが、近所のゴミ集積場に酒瓶等の入ったビニール袋を自転車から投げた人(目撃者談によると自転車で缶回収をする人だったらしい)がいて、それが袋ごと散って、瓶が粉々に割れ道路に飛び散ったらしい。勿論、投げた人は知らん顔で行きすぎてしまう。
さて、吾輩のおばさんはどうしたと思う。
すぐに隣の自宅に帰って、箒と塵取りをもって、そう近くではないそのゴミ集積場に駆け付けたのだ。
後で吾輩が聞くところによると、「この道を使う人が怪我でもしたら大変」「知った限りは知らん顔でけへん」ということらしい。結局、誰も手伝いに来なくて、おばさん一人が片付けたそうだ。
どうだ、吾輩のおばさんは!!!
さて、この頃分かったことだが、吾輩はこの辺では「人気もの」らしい。
前の公園に遊びに来る母子や子供たちは当然として、毎日、散歩で前を通るおじいさんは、吾輩をじっと見続け、ある時は涙を流してくれる。公園の前で、トイレ休憩のために留まるタクシーや運送会社の運転手たちが、必ず吾輩のところに近寄ってくれて、心配そうに眺めている。犬の散歩に通る人たちも必ず、おばさんに声をかける。
そうなのだ!! 吾輩は可愛がられているのだ!! 吾輩の飼い主以外は!!!
とても吾輩が言える立場ではないが、おばさん、くれぐれもお身体をいたわってください。そして、吾輩の世話を、何卒、よろしくお願いいたします。
最近のコメント